美しい
『う、つ、く、し、い、そ、……ら』
辿々しくく本を読む声。
『え、……が、お、……の、せ、い、と』
文字を指で辿りながら一音ずつ文字を読む。
『お、と、の……で、……る、え、……ほ、……ん』
真剣な表情で男が呟く。
『か、……み、……な、……り、……の、お、と』
……ふう、と息を吐く。空を見上げる。遠くで乾いた連続音が鳴る。
(今更こんなことしててもどうしようもないのはわかってるんだ)
支給された袋のなかに本が入っていた。子どもの、小学一年生の国語の教科書。使い古されたものらしく、端はささくれ、ページはよれ、所々鉛筆の落書きもされている。
だが、男にとっては文字を習うのに丁度良かった。
乾いた音が続く。
(やっと文字を少し読めるようになったんだけどな)
瓦礫の陰に身を潜めて、続きを読む。
『き、の、……ぼ、……り、……で、き、た』
『く、……る、……ま、……に、ち……ちゅ、う、い』
まだ、読むだけ。書けは、しない。
『け、……ん、……だ、…ま、……』
その時、風を切る音ともに隠れていた瓦礫の端が欠けた。咄嗟に身を屈める。それまで背を向けていた方向に頭を向けると、機関銃を構えた男が立っていた。
男は先に読んでいた文章を思い出していた。
『あ、か、……る、い、あ、さ、……ひ』
……美しい、そら
1/17/2026, 12:41:46 AM