苑羽

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別に、私はいい子でいなくちゃいけない存在ではない。
なくてはならない存在でもない。
なんせ、うちには優秀な長女がいるのだから。モデルのような容姿と、優秀な頭脳と、温和な性格を持つ、絵に描いたような「いい子」が。
そう気づいてからは、なんだか気楽だった。時々ちょっとだけ寂しくなったりしたけど、変に期待されることもないから、割と好き勝手してたように思う。
とにかく私は、姉の邪魔にさえならなければ、両親や親戚の目に入ることもなく、平和に生きていける。

目の前には、卒業証書と花束を持ち微笑む姉。それを褒め称える両親。
あーあ、終わったな。私の平和な時間が。
今度は私の番だ。親元を離れる姉に変わって、「いい子」でいなければならない。
やだなあ。もうちょっと「出来損ないの妹」でいたかったんだけど。
姉妹揃って優秀ねぇなんて、言われても嬉しくねえよ。

2/9/2024, 1:26:14 PM