かたいなか

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前回投稿分からの続き物。
「ここ」ではないどこか、別の世界に、世界線管理局なる厨二ふぁんたじー組織がありまして、
そこの経理部の天才エンジニアは、ビジネスネームをスフィンクスというのですが、
ちょうど前回投稿分で、法務部執行課の局員・ツバメの弱みをガッツリ握ったところ。

というのもツバメ、なかなかのコーヒー特化なカフェインジャンキーでして、
あんまりカフェインを摂取し過ぎたせいで稲荷狐の漢方医なお医者さんから
『カフェイン摂取量を減らしてください』
『1日の摂取カフェイン量を、ちゃんと日記として記録しておいてください』
と何度も何度も言われておったのです。

なのに、前回このコーヒージャンキーは、
無糖バニラクリームフラッペに
希釈用エスプレッソベースを
どっぱどっぱとブチ込んで、
主治医からも、主治医が送りつけた監視ぬいぐるみからも隠れて、
エスプレッソ●杯分のカフェインをちゅーちゅーキメておったのでした。

稲荷狐は、とっても耳が良いのです。
まさしくお題どおり、耳を澄ますと、
抜けがけカフェインちゅーちゅーなど、すぐ、バレてしまうのです。

「それは困るよな、ぇえ?ツバメくぅん」
によによ、スフィンクスが笑います。
「……料理の美味い喫茶店で、このあと1杯」
ぐぎぎぎぎ。ツバメが端末を取り出します。

完全予約制、一見さんお断り、客単価がそれなり、かつコーヒーのラインナップが豊富にして王道。
ツバメは、とっておきの切り札を、スフィンクスのために切ったのでした。

「最近、マンデリンが入荷したそうです」
「おお!気が利く店舗チョイスじゃねぇの」

「深煎りのブラックが、個人的にオススメです」
「あ? ふかいり?」
「深々としたコクが楽しめます」
「ミカンを深煎り?」

「スフィンクス査問官。マン『デ』リンです」
「うむ」
「マン『ダ』リンでは、ありません」
「……む?」

ミカンのコク?ミカンを深煎り?
耳を澄ますとスフィンクスの、混乱と困惑が小ちゃい長考で聞こえてきます。
スフィンクスは、ミカンがとっても大好き。
スフィンクスの頭の中では、マンダリンオレンジの種を豆に見立ててローストされた嗜好品が、
いわゆるオレンジコーヒーとして、低解像度でもって画像生成されています。

いちおうオレンジの皮で風味付けが為されたオレンジピールコーヒーとか、
オレンジジュースとコーヒーを合体させたオレンジコーヒーとか、
ミカンを活用したコーヒーも、無くはないのです。

「どんな味だ、その、深煎りしたミカンコーヒー」
「ですから、マン『デ』リン」
「いや、待て。俺様の楽しみを薄めるでない。
注文してからのお楽しみだ」
「あのですねスフィンクス査問官??」

ああ、ああ。ダメだこりゃ。
ツバメは長いため息をひとつ吐きました。

でも間違いなく、そこの喫茶店のコーヒーは、サイドメニューとの相性も含めて、美味いのです。
ツバメは凝ったトッピングや、アレンジをあまり楽しまないので、試したことはありませんが、
それでも、その喫茶店にオレンジピールのアレンジや、シトラスシロップのトッピングが完備されているのは、知っておったのでした。

「席が取れました」
ツバメが端末から顔を上げました。
「おう!でかした!」
スフィンクスの目が、キラキラ輝きました。
「待ってろ俺様のミカンコーヒー!」

そこから先のことは、お題とあまり関係が無いので、詳細には書きません。
ただ間違いなく、喫茶店に到着して、メニューブックを見たスフィンクスは、
耳を澄ますと、
「ミカンのコーヒーじゃ……ない?」
と、言っていることでしょう。

5/5/2026, 4:29:41 AM