卑怯な人

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小学生の頃、年に一度か二度保健室の先生が授業をすることがあった。いつだったかは忘れたが、おそらく五か六年生の時だろう。突然、「ココロはどこにあるでしょう」と聞かれた。無論、教室にいるみんなは胸を指さした。しかし、先生は「不正解」と言った。正解は頭であると。確かに、余りに多くの人間の作用を司る器官であり、幼いながらも納得がいった。

そして、その言葉は、妙にココロに残った。

けれど、成長し成人に近づくと、その言葉に違和感を感じるようになっていった。例えば、悲しい時に私たちは胸がキュッとなり、感動した時には胸がジーンとしたり、ほんのり暖かみを帯びた様な感じになったりする。

そう、今まで言った全てに共通するのは「胸」なのである。だから「先生があの時言ったことは、少し違うのではないか?」と、考えることもあった。

ただ、人体というのは基本的には無駄が少ないものだ。ココロが動く時は、何かしらの命令が心臓や、その付近に送られるのだろう。何らかの理由があるのだろう。そうも考えた。

だが、私は医者でも博士でもなんでもない。自由気ままに考えるココロの旅人である。信じるのなら、私は「ココロは胸にある」と信じたい。信じてみたいのだ。

例え、理想を追い求め続ける大馬鹿者と罵られても構わない。私は、そんなココロが好きだから。

                
                  了

2/11/2025, 12:49:23 PM