彼岸花

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#踊るように

僕はずっと、お芝居のわけ役だと思ってた。

シンデレラの役が、クラスの可愛い女の子だとするなら
僕はただの、そこらへんに生えてる木だ。

魔法使いや王子様、馬だって凄い。
みんなみんな主役だ。

そして僕は、それらを端で眺める愚か者だ。

自分が情けなくなる。
なんでみんなみたいに明るくなれないのだろう。
輝かしい才能もないのだろう。

そう思っても、足が一歩も動かない。
むしろ、人前に出るのを恐れている。

それなのに僕は、こんなことを嘆いてばかり。
ほんと、馬鹿だ。

こんな劇の幕なんか、さっさと閉めてしまおう。

そう思った。

そんな時、一人の踊り子が目に入った。
誰にも見られない場所で一生懸命踊ってる。

「ねぇ、一緒に踊らない?」

その子はそう言って僕の手を引いた。

「誰かから評価されなくてもいいの。」
「ただ、せっかくのお芝居だから…楽しもうよ。」

閉じかけた幕を再び開けて、
止まりかけた時間を元に戻して、
また劇が始まった。

9/7/2024, 11:21:12 AM