蓼 つづみ

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にぁう…にぁ…
きみの鳴き声ってさ、ぬるい液体が日だまりを撫でながら流れるみたいだったよね。

小さな口から空気がゆっくり溢れて、喉の奥であたたかい水面が揺れてる感じ。
柔らかい毛の体がふわりと揺れて、息と一緒に体温が溶け出してくるみたいな波の揺れ。
子音より呼吸に近い、小さな猫の声。

あの声は、思考の翻訳を挟むものじゃなくて、“そのまんま”だった。

「ここにいるよ」
「気づいてるよ」
「今の気分はこんな感じ」
状態そのものが空気を揺らしてて、伝わろうとしなくても、同じ場所の波長を合わせに来るみたいな感じ。

だから、私もきみの前では取り繕う必要なく、“そのまんま”でいられたんだ。

きみが亡くなったとき、さよならは言わなかった。言えなかったんだよ。
だって、私にとってきみはもう、内側にあり続ける体温になってて、終わってなんかいなかったから。

胸の中で脈打ってるものに「さよなら」なんて、もうどこにもいないことにするみたいで、言えなかった。

ありがとう。今も瞼の裏には、きみと過ごした日々がある。
柔らかくてあたたかい、小さな足音や毛の匂いも、そのまま覚えてるよ。

題 ぬくもりの記憶

12/10/2025, 2:16:57 PM