距離
結婚してください、は何か違う気がする。
ずっとそばにいたい、それはそう。
でも縛りたいわけじゃない。
縛られたいと思ってないけど、縛られるのも悪くないと思ったのは目の前のコイツだけで。
縛られる事の窮屈さも、縛ってしまうことで奪うものも知っているからこそ、首に輪をくくりつけるみたいに指に嵌め込むもので未来を奪う事に躊躇う。
幸せになって欲しい、それはそう。
でも離れる事が出来るかわからない。
お前がいれば俺は幸せだけど、俺がいた時お前が幸せになるかといえば…。だからそばに居させて欲しいけど幸せになるのを邪魔したいわけじゃなくて、ただお前が幸せになるのを見ていたいっていうかだからそれは…
『あのねぇ…』
振り向いた顔がうんざりしたような呆れたような、それでいて何もかも見透かして許している甘やかさをしていた。だから、ほら俺はお前に甘えちゃうんだよ。
『何考えてんのか知らないけどねぇ。』
大袈裟な程に大きなため息をついて体をこちらに向けて向き合う仕草にいつものように何もない顔で向き合う。感情を顔に出さないのは得意だ。それがコイツ相手に通用しない事も知っている。
『僕が、アンタを』
せっせっせのヨイヨイヨイの勢いで両手を取られた。
手から伝わる温かな温度が心地よく響く。
笑いたくなるような泣きたくなるような、そんな気持ちをお前はいつだってくれるんだ。
だからこそ…
『手放すわけがないでしょう!』
力強く言い切る目の前の誇らしげな顔を見て
ついに俺は噴き出した。
👓心の距離
12/1/2024, 10:44:14 PM