三三三

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「こんな時間まで何してたんだ」
最寄駅に着くと、キミが立っていた。
「なんで?」
こんなところに、いるの、と言い切る前に肩を強く掴まれる。
「……っ」
「質問に答えろ。こんな時間までどこ行ってたんだ」
「ちょっと!痛い!」
キミのことを強く睨んだ。なぜこんなに責められなければならないのか理解できなかった。
質問に答えない私に、キミはますます苛立って私の肩をさらに強く掴む。
その痛さに、自然と涙がこぼれた。
「……!」
流石にやりすぎたと思ったらしく、キミは無言で腕を引く。
そのまま黙っているキミをしっかり見つめる。見れば今日は涼しかったのに汗だくだった。
「……もしかして、私のこと探してくれてた?」
「当たり前だろう!こんな時間になっても連絡ひとつよこさない、こっちから連絡しても返信もない!これ以上見つからなかったら警察に連絡するところだった……」
はあーっ、と大きく息を吐いてキミはその場に座り込む。
「……バイト」
「……は?」
「バイト先で欠勤が出ちゃって、それで残業断れなくて、気づいたらこんな時間なっちゃってた」
連絡できなくて、ごめん。最後は声が掠れて聞こえるか聞こえないかしか言うことができなかった。
「……」
キミはスッと立ち上がった。私は下を向いたままで、表情を確認することはできない。
私のほうに、長い腕が伸びてくる。また掴まれる!と思ってギュッと目をつむった。

果たして、腕は私の背中に回されてそのままキミの方へ引き寄せられた。
「……へ?」
「頼むから、次からは連絡してくれ。終わってからでもいい。そうしたら僕が迎えに行くから」
私は軽く混乱していた。普段こんなことされたことがない、なんで抱きしめられているのかさっぱり分からなかった。
「もしかして、すごく心配してくれて、た……?」
「……ああ」
小さな声でキミは答える。
「頼むから、もうこんなことはしないでくれ……」
「……うん。ごめんね」
そう言って私も抱きしめ返した。

ああ、こんなにも、誰よりも愛されているって感じて良いのだろうか。
今だけ、この瞬間だけは、許して欲しい。そう祈りながら温もりに体を託した。

4/9/2024, 1:34:00 PM