anonymous

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「こちら本日のデザートでございます。」
目の前に置かれたのは、暗く深い色をした水信玄餅のようなデザート。ペンダントライトの光が反射して淡くきらめいている。
ナイフが空気をなぞるように通り、口に入れると溺れるような甘さとほんの少しのしょっぱさを感じる。
「これは…?」
舌の上で静かに溶けたそのデザートは、私に何かを思い出させようとする。

「…真夜中の海を切り取ったものです。」
去年の夏の記憶が、頭の中を泳ぐように通り過ぎていく。


夜の海

8/15/2023, 5:05:44 PM