小絲さなこ

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「もう潮時か」



子供の頃よく遊んでいた公園からジャングルジムが撤去されたそうだ。

その公園は、通学路とは反対方向にある。
高校生になってからというもの、その公園の前を通ることが減ってしまったから知らなかった。


「遊具を撤去する公園って、増えてるらしいよ。とくにジャングルジム」
「へー。なんでだろ」
「危ないからじゃない?」
「そんなん、今さらじゃね?」
「あんたも何回も落ちて怪我してたしねぇ……」

幼馴染がニヤニヤと笑いながら俺を見ている。
小学生の頃から高校生になった今も、一緒に登下校しているが、彼氏彼女の関係ではない。まだ……

話題にのぼったからと、少し遠回りして懐かしい公園に寄り道。

「あー、本当にないね」

子供の頃、広かったと思っていた公園は、それほどでもなくて、それは俺たちがそれなりに大きくなったから。
でも、体は大きくなっても、それ以外が成長しているかどうかはわからないよな、などと思ったりする。


「一番上に登ったとき、自分最強だと思ったなー」
「そのあと落ちてビービー泣いてたけどね」
「うるせー。忘れろ。そういうお前は、怖がって一番上に登って来なかったじゃねーか」
「だって、危険だってわかってるのに、行こうとは思わないもん」
「……ほんと、変な子供だったよな、お前」
「でも、ずっと友達でいてくれてるあんたも変だよ」


あの頃からずっと一緒にいる俺たちだが、三年後どうなっているかわからない。

この公園の遊具のように、ある日突然俺の隣から居なくなったりとか……そう、彼氏が出来たり……
それだけは勘弁してほしい。


「そろそろ友達は卒業したいんだけどな……」

思わず呟いてしまった一言。

どういう意味かとしつこく聞いてくる。
あぁ、もう潮時か。この気持ちを隠しておくことは出来そうもない。


────ジャングルジム

9/23/2024, 3:18:55 PM