この12ヶ月間は、よく転んでいた。
運命に悪戯された穴につまづいては転び、何も無いところでも転んでは大厄の歳をその身で知り、酷い時は自ら墓穴を掘った上、その穴に盛大に転びもした。
当然、満身創痍だ。一度は肋骨が疲弊骨折しかけたが、何とか無事でいる。足の傷やアザよりも、私の後ろにある穴ボコだらけの道がとても痛々しい。
だが、ただでは転ばない。
そうあらゆる内臓を煮えたぎらせ、倒れたまま転んだ先を見上げた。その先には、いつも芸術が立っていた。
マリー・ローランサンもオルフェーヴル号も志賀直哉も新美南吉も山本有三も小泉八雲も身身身ちゃんも谷崎潤一郎も、私の視線の先で待ってくれていた。
土塊と共に立ち上がった私は、彼らの芸術的遺伝子を授かりたくて、自らもう一度地に膝をつけて頭を垂らした。
いついかなる時も、例え足が折れようとも、彼らの芸術がこの血潮にある限り、私は何度でも立ち上がるとたましいに刻んだ。
再び顔を上げれば、天空に鴎が一羽孤独に飛んでいる。古今東西、波紋響く海面に映る鴎の影に向かって、私は一緒に羽ばたきたくて歩み出した。
(241230 一年間を振り返る)
12/30/2024, 12:55:16 PM