火星付近。船体に亀裂が走り、警報が鳴り響く。
爆発まで、あと数十秒。
僕は、地球の妻へ最期のメッセージを送ろうと、震える指を端末にかざした。
旅立ちの朝、些細なことで口論したままだったから。
だが、いざ入力画面を前にして、僕は動きを止めた。
謝りたいか?
愛していると言いたいか?
漆黒の宇宙を見つめ、僕は冷徹な事実に気づく。
伝えたいことなんて、最初から何もなかったのだ。
僕は静かに、端末の電源を切った。
最期の瞬間に、伝えたいことが山ほど溢れて止まらないような、そんな相手と結婚すればよかった。
『伝えたい』
2/12/2026, 3:51:37 PM