堅牢な建物もいつかは崩れる。
綺麗な花もいつかは枯れる。
分厚い氷河も溶ける日は来るし、星にだって寿命はある。
保存しておいたデータだって動作が重くなったりするし、継ぎ足しの秘伝のタレは、継ぎ足すことでコクが増す。
「さっきから貴方、何が言いたいの?」
「いや、この国はなんで年を取ることを悪いことみたいに言うのかなって」
「そりゃ、皺は増えるし体はたるむし重くなるし、思考速度も遅くなるからでしょう?」
「それって、当たり前の事で悪いことじゃないでしょう?」
「それは貴方が若いから言えるのよ。私くらいの歳になるとね、昔のままでいたかったってしょっちゅう思うんだから」
「僕は」
「なによ」
「僕は苦しい事も楽しい事も乗り越えて来た貴女の、その佇まいが好きなんだけどな」
「――」
「年上をからかうもんじゃないわよ、って言わないで下さいね」
「……」
その眼差しがいつになく真面目で、私はすっかり言葉を失くしてしまうのだった。
END
「変わらないものはない」
12/26/2023, 11:24:56 AM