「そういえば今日は七夕だな」
ふと向かいの席に座っている同居人が、何の脈絡なく呟いた。
「何だよ急に」
「や、今日は7月7日だなって」
「あ、今日なんだ。すっかり忘れていたわ」
「言うて俺も今気づいたんだけどな」
今日そんで晴れているし、と、横にある窓へ視線を移す。僕も同居人に倣って窓を見た。快晴も快晴。気温も三〇度を超える夏日である。
「七夕の日が晴れって珍しいよね」
「確かに。大体雨なイメージ」
「時期が梅雨と被るからねぇ」
「てかさ、彦星と織姫が一年に一度しか会えないって言う日に、俺たちはというと短冊に願いを書くとかなかなかに傲慢な日ではあるよな」
「身の蓋もないことを…」
「彦星も彦星で、会えないんだったら川を泳ぐとかガッツを見せろって感じよな。ヒロインに可哀想な思いをさすなって」
「ロマンなんだよきっと。あと織姫をヒロインって略してあげないで。まぁ二人に関しては自業自得な部分があるから。仕事そっちのけでリア充してたらしいし」
「お前もリア充とか一言で片付けんなし」
しかし折角行事を思い出したんだから、何かやっておくか、と同居人が言い出す。
「短冊とか今から用意するか?」
「いや良いよ別に。竹とかどうするの」
「お前が育てている苗木で良いじゃん」
「僕の可愛がってる苗木は七夕の木じゃありません」
「ちえ」
「まぁ、七夕にちなんだ夕飯くらいなら考えても良いかな。星型のフルーツポンチとか」
「うわ懐かしいフルーツポンチ。給食以来食ってないわ」
「今食べると甘過ぎるかな」
「まぁ偶には良いんじゃね」
今日の夕飯は素麺かな、と買い物メモを取り出しながら、僕はフルーツの果物は何にするか考えるのであった。【七夕】
7/7/2024, 10:25:23 AM