雪になりきれなかった雨が、冷たく地面にあたって消える。
まるで俺と彼女の今の現状のようだ。
俺の彼女は、いわゆるメンヘラ。病んでる。とてつもなく病んでいる。
何か気に入らないことがあれば、しにたいと言って自傷行為に走る。質が悪い時は俺に刃を向けてきて、一緒に逝こうと迫ってくる。
なんで別れないのかと他人は言う。いや、普通に考えて別れられないだろう。
ころしに来るから? 違う。この娘は俺がいないと、本当にどうなるか分からないから。俺じゃないとダメだと思うから。
これが「マインドコントロール」というものなのかもしれないけれど。俺から別れることは、今のところ考えられない。
「疲れちゃったよね、もう私といるの嫌だよね」
今日も彼女のメンタルはヘラっているようだ。
雪という無になりきれずに、今日も冷たい雨を降らしている。
「もう、別れた方がお互い楽なんじゃないかな」
「俺は楽にならない。お前がいなくなったら、俺はどうやって生きていけばいい?」
彼女は困っているのか、嬉しいのか、ただただ声をあげて泣く。
俺は冷たい雨を受け止める地面でいなければならない。義務とかじゃない、俺の意思だ。
彼女はたぶん、本当に別れることになれば、そっと消えてしまうのだと思う。
そうならないように、俺はできるだけ支えて受け止めるから。
だから、さよならは言わないで。
【さよならは言わないで】
12/3/2022, 1:00:12 PM