愛を注いで
|恵美《えみ》はいつも人間関係でトラブルを起こす子だった。
わざわざ口に出して言わなくてもよい一言を無意識に言ってしまい、良く相手を怒らせてしまう。
愛想笑いも無意識ですることが多く、自尊心が低いこともあってか、そのせいで普段の生活の中で人間関係が上手に築けなないでいた。
そんな恵美だったが、彼氏は常にいた。
「今度の彼氏はマッチングアプリで出会ったんだよ、年上の大学生で料理が上手なの」
新しい彼氏が出来る度、そう言って友達の|優香《ゆうか》に話しては自慢するのが恵美にとってのルーチン。
他の友達は恵美の話をウザがって聞いてくれないのに、優香だけは最後まで話を聞いてくれたので、恵美にとって優香は特別な存在だった。
ところが、特別な存在だった優香も、年頃になると彼氏が出来て順調な交際の後結婚してしまうことに。
そのせいで、恵美は一人置いてけぼり状態になり、負けた訳でも無いのにそれが悔しくて仕方が無かった。
そして、優香とも何時しか連絡が途絶えてしまう。
優香は赤ちゃんも生まれて生活が忙しくなったものもあるが、恵美の自慢話が本当は嫌で仕方が無かったのだ。
ただ優しい優香には恵美を切り捨てることが出来なかったので、優しさから話を聞いてあげていたらしい。
恵美は結局、優香が優しさから話を聞いてくれていたということを知らない。
その後も、また新しい彼氏ができては、話を聞いてくれる人を見つけて自慢するのを繰り返した。
人は皆子供時代に親からの愛情を充分注いで貰えずに育つと、貰えなかった愛情を他から貰おうとしてしまい、人格に歪みを生じる。
だから恵美も同様、親の愛情不足で育ったので簡単に愛情を注いでくれる異性に懐いてしまう。
恋人がいないと耐えられなくなり、別れても直ぐに見つけ出してしまう…………所謂「恋愛依存症」なのだ。
子供の頃に満たされなかった愛情を、恋愛で満たそうとしている状況なのだろう。
だから、結婚したくても付き合っては別れて…………を繰り返してしまう為、恵美はその後も彼氏はいるけれど結婚出来ずにいる。
恵美が幸せになるためには、寂しさや自信のなさを恋人で満たすのではなく、自分に自信をつけることで満たされるようにしていく必要があるのです。
だから大人の責任として、我が子には愛を注いであげて下さいね。
12/14/2022, 2:07:43 AM