黒山 治郎

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傘の中のハッキリしない筈の境界線
夜の街に降る雨が点滅する街頭に照らされ
私の現実世界へ延々とノイズを走らせている
車が走り去ったばかりであろうアスファルトは
音も無いままじわりと湿り気を帯び始めていた

漫ろ雨に誰かはレインコートの奥で顔を伏せている
足元の長靴に溜まった水が動く度に溢れ出す様は
この子にとって陰雨でしかないと暗喩していた

踏み出した靴は防水性に劣っていて
水溜まりを大きく踏みしめれば
その長靴と同じく足は濡れてしまって
意味をなさなくなっていた

けれど、跳ねる水音は億劫な私を弾いて
濡れそぼった君へハンカチを渡すには
充分な切っ掛けになった

「…あの!」

予報では、まだしばらく
雨は降り止まないだろう

               ー 降り止まない雨 ー

5/25/2024, 4:28:59 PM