椋 muku

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この季節になると、赤い服を着た白ひげのおじさんが誰彼構わず子ども達に無償でプレゼントとやらを贈るらしい。
思えばどの家庭でもこの白ひげおじさんへの教育は欠かさずしている。クッキーと牛乳をお礼に渡すのだとか無くなっていたら白ひげおじさんが来たのだとか。子どもの心理を分析し尽くして定着した風習なのだろう。その上素直な子どもたちは「寝ていないとプレゼントを貰えないわよ」や「悪いことをしたらブラックリストに載ってプレゼントがもう貰えなくなるかもしれないぞ」という言葉をすぐに信じ込むために、より親へ忠実になっていくのだ。
さて、今になって考えてみる。私たちが教育されてきたこの白ひげおじさんはどんなに仮定を並べたとしても理屈が合わない。つまり行き着く先はどれも同じ。全ては空想上の物語なのだと。考えてもみよ。そんな格好で無償のプレゼントだなんて不審者同様であろう。それにその白ひげおじさんは世界中の「全て」の子ども達にプレゼントは送れまい。極端に飢餓に苦しんでいるアフリカの子ども達へプレゼントが届くことは果たしてあるだろうか。子ども達にプレゼントを送れたとして、望むものでは無かったのなら、それが手に入らぬものだったのなら…どれもこれも空想でしか叶えられないことばかりではないか。その白ひげ野郎とはやはり、都合のいいように作られた人間による偶像崇拝に似たあつい信仰なのだ。
さて、話は変わりクリスマス・イブを明日へ備えた今日。私は赤服を着て白ひげを付け子ども達の所へまわったのだ。喜んで私へハグを求める子もいれば不思議そうにまじまじと見つめ眼をうるうると光らせる子もいた。
子ども。それは常に純粋で穢れとは無縁のある意味神に近しい存在なのかもしれない。誕生。それが神が私たちに与えた一番最初で最大のプレゼントなのかもしれない。白ひげおじさんと化した私は静かに考えながらプレゼントを配るボランティアとして活動するのだった。

題材「プレゼント」

12/23/2024, 12:40:35 PM