語り部シルヴァ

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『飛べ』

勢いよく走り出し崖スレスレで飛ぶ。
大きな水飛沫を上げて水面が激しく揺れる。
「ぶはっ!あー!気持ちいいー!」
飛び込んでまもなく顔を出して大きな声でいとこは笑う。

「なー!早く来いよー!」
夏休みでおばあちゃん家に来たら偶然いとこも来てたようで
こっちに着くや否やいとこに海に行こうと手を引っ張られた。
海で泳ぐことには慣れているが飛び込みに関しては全くで
恐怖心しか勝たない。

「いやいや、さすがに無理だって」
「なんでー!俺ができたんだからできるってー!」
いとこは随分と自分勝手で昔からよく振り回されてきた。
だが今回ばかりは無理だ。

「お前ならできるよー!大丈夫ー!」
ほんと好き勝手言いやがって...
「死んでも文句言うなよー!」
やけくそになって走り出す。青い海がどんどん広がっていく。
「今だー!飛べー!」
いとこの声を聞いて精一杯地面を蹴って飛ぶ。

鼻に海水が入って少し痛いが、どことなくスッキリした。
「な?大丈夫だっただろ?」
いとこが笑顔で近づいてくる。

またいとこに振り回されたが...まあ悪くないかもしれない。
普段やらないような体験にいとこの笑顔を見れたから
深く考えないようにした。

語り部シルヴァ

7/19/2025, 12:22:09 PM