【35,お題:開けないLINE】
「桃子?...寝てるの?」
真っ暗に締め切った部屋の中
もう何度目だ、外からの母の声を聞いたのは
「桃子、りんご切ったのよ。食べる?」
うるさいな ほっといてよ
「......お母さんお仕事に行ってくるね」
トン...トン...トン......
音が遠ざかって、車のエンジン音が聞こえなくなるまで待ってから
私はおもむろに布団から這い出した。
気持ち悪い 頭痛い
そういえば昨日からなにも食べてないなぁ...
......ピロン
「...っ!」
唐突に鳴った通知音に飛び上がり、恐る恐るスマホを手に取った
「!...ぅ...あぁ...」
明るくなったロック画面に現れたのは、私への罵詈雑言の嵐
多分授業中に先生の目を盗んでやってるのだろう
止まることない悪意の包囲網
慣れてるはずなのに、なぜか涙が溢れた
開く勇気はない、既読を付けてしまったらさらに悪化しそうで開けなかった
「...ッ!こんなものッ!」
ガンッ!
スマホを壁に投げつけて、布団に潜り耳をふさいで息を止めた
消えちゃいたい消えちゃいたい消えちゃいたい消えちゃいたい消えちゃいたい消えちゃいたい消えちゃいたい消えちゃいたい消えちゃいたい消えちゃいたい消えちゃいたい消えちゃいたい消えちゃいたい消えちゃいたい消えちゃいたい消えちゃいたい消えちゃいたい消えちゃいたい消えちゃいたい消えちゃいたい消えちゃいたい消えちゃいたい消えちゃいたい消えちゃいたい消えちゃいたい消えちゃいたい消えちゃいたい消えちゃいたい消えちゃいたい消えちゃいたい消えちゃいたい消えちゃいたい消えちゃいたい消えちゃいたい消えちゃいたい消えちゃいたい消えちゃいたい消えちゃいたい消えちゃいたい消えちゃいたい消えちゃいたい消えちゃいたい消えちゃいたい消えちゃいたい消えちゃいたい消えちゃいたい消えちゃいたい消えちゃいたい消えちゃいたい消えちゃいたい消えちゃいたい消えちゃいたい消えちゃいたい消えちゃいたい消えちゃいたい消えちゃいたい消えちゃいたい消えちゃいたい消えちゃいたい消えちゃいたい消えちゃいたい
その間にも、ピロンピロンピロンと通知の音はなり続けた。まるで、返事をしない私を責めるように
なにか言い返せればよかったのだろうか
誰かに助けを求めればよかったのだろうか
そんなことを考えながらも
開けないLINE
9/1/2023, 11:19:15 AM