ティーンエイジを無駄に過ごした。くだらねぇと下品に笑った隣には何時も、君がいた。
下手な時間の使い方。大人になったら後悔するぞ、脅しのような僕らを思う忠告は、その実ちゃんと聞こえていた。
全部、知っていた。あのときああしてれば。悔やむ日は、きっと、じゃなくて確実にくると。でも人生なんて、そう思わない瞬間なんかないだろ?
だったら、後悔さえも、共に笑い飛ばせる人がいれば、それでいい。
そうだその選択は、たぶん間違いじゃない。
阿呆なのは僕だけだ。形に残るものがいい、そうねだったのは、僕ばかりだ。
ねだった半年後に、君はそれを持ってきた。誕生日でもクリスマスでもない、平凡な秋曇りの日。曇天の下、君の腕に抱かれたのは、ラッピングもされていない、量産品のクマのぬいぐるみ。宝物にしてね。微笑みながらそれを差し出す君に当たり前だと答えた僕は。
とんだ間抜けだと、気付かなかった。
……なあ、何時からだ? 君は何時から。
何も知らなかった、知りたいと思ったのは、嫌でも将来を見据えないといけなくなったから。
自分だけならどうにかなる、確信があった。君はどうするつもりなんだ。沸いた疑問に続くように、初めて心の内を何も知らないのだと、知った。
どうしようね。どうしたら良いと思う? 楽しそうに問うてくる君は、全く困ってなどいなかっただろう?
そうして初めて疑念は形になって。どうするつもりもないのだと、あのときの自分なら分かった、筈だ。見たくなかったのは。
そらした視線の先で、潰れた蝶が羽をひくつかせていた。
君は酷い、奴だった。
残ったのは、首もとの破れたクマばかり。捨ててやれば良かった。それもできない僕を女々しいと笑うか。
宝物は呪いに成った。そうだ笑ってくれよ。みっともなくクマにすがり付いて泣きじゃくって、それで、死者が笑ってくれるなら。
君の声を、聞けるなら。
11/21/2023, 9:57:30 AM