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──すべてを打ち捨ててきた。情も愛も要らないと歩んで来た道に置いてきた。振り返れば点々と落ちたそれらが所在無さげに淡い光を放っている。きれいだとも、うつくしいとも思えるひかりだ。ひたすらにやさしくあたたかい。拾い上げに踵を返そうとして、自分が両手いっぱいに何かを抱えていることに気がつく。まっくろでどろどろとしたそれは、紛れもない恐怖。汚れた手を見て、怖がりな自分は欲してきたものをすべて捨てて、要らないものだけを抱えて歩んでいたことを理解した。ああ、寂しい、寒い。ここはいたく冷える。歩んでいこう、まっくろな道の先へ。

3/16/2024, 10:23:04 AM