「変わってないなあ」
そう口に出してしまうくらい、3年ぶりに帰ってきた地元はあの頃のままだった。風景だけじゃなく、雰囲気とか時間の流れ方はあの頃のまんま。
「この道を真っ直ぐ行って、次を右に曲がって」
懐かしい道を歩いてみる。よくここで学校さぼったりしたっけ、とか、この先の空き地で遊んだよな、とか。案外覚えてるもんだなと思った。
今歩いてる道は岬の方へ続く道。道端にコスモスが咲いていた。時折、風に吹かれて揺れている様子が可愛く見える。
そう言えばあの時もこんな季節だったなあ。この突き当りを曲がろうとした時。反対側から来る人と派手にぶつかった。すみません、と謝る声が同時だった。申し訳なさそうに頭をかきながら立っていた。それがあなただった。
またこんなふうに小走りで駆け抜けたら、もしかしたら。居ないはずのあなたを想像してしまう。だが、曲がった先に待ち受けていたのは秋の穏やかな空だけだった。こんな日にこんな所に、あなたは居るわけないよね。
今も元気にしてるかな。季節の変わり目によく体調を崩すあなた。うまくやってるといいけど。
西の空にひつじ雲が見えた。秋の空らしい景色。穏やかな空と裏腹、吹いてくる風はほんのり冷たくて思わず身震いしてしまう。この風もきっとあの頃吹いてたに違いない。すっかり秋なんだなぁ。ほんの少し感傷的になりながら、再び私はこの道をゆっくり歩き出した。
11/15/2023, 8:48:49 AM