「カーテン」
あの綺麗な横顔が好き。あの甘い声も好き。あの優しく天使のような笑顔が好き。
俺には、好きな人がいる。名前も知らないあの子。大学で会ったあの子。初めて会った時、あの子は俺のペンを拾ってくれた。その日から、あの子の事が頭から離れない。これが、一目惚れってやつなのかぁ…
ある日ふと、カーテンを開けて青空を見る。いつも、忙しくて空なんて気にしてなかったけど、今は違う。心がハッピーハッピーだからだ。
青空を見終わると、向い側のマンションを見る。俺が住んでるマンションより低くて、俺の階からも屋上が見える。カーテンを閉めようとすると、向いの屋上から、ちらっと人影が見てた気がする。好奇心で屋上を見ると、1人の女性がいた。
俺の体は、雷にうたれたように崩れ落ちた。
「嘘…こんな…!」
そこには、俺が一目惚れした名前も知らないあの子だった。
「運命だ…!」
俺の顔と心は、真っ赤に染まった。
その日から、毎日カーテン越しに、マンションの屋上を見る。可愛いあの子は、屋上でダンスやバレーをやっている。すごい魅力的で、胸をうたれる。
あの子に会いたい。カーテン越しじゃなくて、ちゃと、近くで…
そんな夢も叶わず1年がたった。まだ、名前も知らないあの子は、バレーをしている。カーテン越し見るあの子に俺は、ますます好きになった。
ある日、大学に向かおうと横断歩道を渡ろうとすると、少し前に、名前も知らない大好きなあの子がいた。
俺は、こりゃまた運命だ!と思い勢い任せで名前も知らないあの子に話しかけようとした。
「すいませ…」ブルゥゥン!
荒い車の走行音で、俺の口がとまる。
気づいた所で、もう遅かった。
暴れた大型トラックは、俺を避けるように突っ込んでいった。
『ニュースです。東京都x x市で、大型トラックが信号無視をし、人々が歩いている、車道を突っ込みました。原因は、飲酒運転と見られ、死者は1人負傷者12人。全身を強く打って死亡。警察は、調査を調べています…』
痛くない。皆んな…怪我してる…あれ、俺、痛くない…
俺だけ、無傷…?
俺の、初恋の相手…一目惚れした、名前も知らないあの子は、死んでしまった。俺の目の前で、グチャグチャになりながら。原型もとどめてないあの子。それでも、あの子は好き。
まだ、カーテン越しに見るあの子が好き。
まだ、名前も知らないあの子が好き。
7/1/2025, 6:18:03 AM