雷鳥໒꒱·̩͙. ゚

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―はなればなれ―

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望結へ

もうずっと昔のことなんだけど、
はなればなれになってしまった君。
今まで忘れてたってわけじゃないんだけど、
こっちも色々忙しくってね。
あれから暫く君のこと気にかけられなかったけど、
君は元気だった?
僕は元気でやってるよ、今のところはね。
そっちの暮らしはどんな感じ?
居心地悪くない?寂しくない?
友達はできた?喋り相手は居る?
いじめられたりしてない?独りになってない?
毎回思うけど、こうも返事がないと、
不安で仕方ないんだよ。
特に君は環境に慣れるのが早くなかったから、
余計に心配なんだ。
君にも色々事情があるんだろうけど、
もし無視してるだけっていうなら、
僕はどうにかなりそうだ。
そうそう、もうすぐ僕もそっちに向かう予定なんだ。
まだ予定ってだけだけど、ほぼ確定してる。
だから、そっちに着いたら、
君がちゃんとガイドしてね。
そっちに行くのを、君に会えるのを、
とても楽しみにしてるんだから。
今すぐ行くよ、待ってて。

輝空より
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宛先を書いていない封筒に包んだ手紙と
小箱から取り出した古びている竹とんぼ、
近くにあったハードカバーの本を手にすると、
スマホや財布、鍵さえも持たずに、
時間が止まっているかのように静かなその家を
あとにした
予定通りに向かった先は
来月に取り壊しが決まった廃墟ビルの屋上
黒字でKEEP OUTと太く書かれた黄色のテープを
くぐって中に入った
朽ち果て、今にも壊れてしまいそうな階段を
慎重に上り、屋上に着く
勇んで来たはいいものの、
まだ下にはたくさんの人がいて
僕は一瞬迷ってから、少し時間を潰すことにした
持ってきた本を読みながら夜を待つ
本好きの僕が1番気に入っている本
これを読み終える頃には夜も更けてくるだろう
誰も自分を邪魔しない、1人だけの空間を
僕は思う存分、堪能した
そして、めくるページを照らす太陽が
空から消え、代わりに月がやってきた頃、
屋上の端に移動した
人が少なくなってきたのを確認すると、
僕はそこで靴を脱いで揃え、
その傍に手紙を置き、
風で飛ばないよう、本で抑えた
そして竹とんぼを両手に挟むと、
書いた手紙の末尾を暗唱する
『そっちに行くのを、君に会えるのを、
とても楽しみにしてるんだから。
今すぐ行くよ、待ってて。』
祈るような声でそう呟くと、
僕は深く大きく息を吸い、
右手を前方、やや下向きに勢いよく突き出す
竹とんぼが飛び出し、舞い始めるのと同時に
僕も飛び出した
さすがに舞うことはできなかったけれど
僕は全身で風と重力を感じた
そして薄れゆく意識の中で君を想う
目の前にタイミング良く舞い降りてきた
竹とんぼにやっとの思いで手を伸ばす
弱々しく伸びたその手が、
風を遮り伸びたその手が
竹とんぼをゆっくりと掴んだ
僕はその手を大切に引き寄せ、
胸に抱くように押し当てると目を瞑り、
そのまま意識を失った

11/17/2022, 9:16:14 AM