Mio

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「ぷはっ!」

長い潜水時間を終えて、海面から勢いよくマイが姿を現した。
真昼の日光を燦々と浴びながらゼイゼイと肩で息をするマイに、私は呆れ顔を隠せない。

「もうやめたら?海の底に伝説のお宝が眠ってるなんて、そんなのおとぎ話でしょ」
「お、おとぎ話じゃないよっ!言い伝えだよ!?きちんと伝承されてるんですー!」
「……信憑性ゼロ。しかもシュノーケルとか持ってないんだから、そんなに深くまで潜れないでしょ」
「うう、でもでも!こう、潜ってればいつか見つけられる気がするんだよね。海底にピカピカーって、光る何かをさ!」

何かって。頭上に輝く太陽と同じくらいの煌めきを放つマイの瞳を前に、私は大きく息を吐いた。
確かに同年代の友達の中でもマイは幼い方だけど、まさかこんな「海の底には海賊が隠した伝説のお宝がある」なんて子供じみた"言い伝え"を本気で信じるとは思わなかった。

「ほらほら、ミツも休憩終わったでしょ?もいっちょひと潜りと行こうよ!」
「えー、いいよ私はもう……」
「そんなこと言わないでさ、ほら、いっくよー!」

せーの、とマイが大きく息を吸い込み、まだろくに準備もできていないあたしの手を引いて再び水中の深くへと身を投じる。

お宝なんて、そんなに欲しいもんかね。

コバルトブルーの海の中で、マイが声を出さずにあたしに笑いかける。いたずらっ子そのものの笑みだった。

あたしにとっては、あんたとこうしてふざけてる時間の方がよっぽど宝物なんだけどな。

1/20/2023, 12:56:31 PM