「あ、お小皿とって」 「はーい」
とてとて、とスリッパを軽く鳴らして食器棚から小皿を取り出してくる君。
「どーぞ」 「ありがとう」
グツグツと煮えたぎる鮮やかな赤色を鍋から一掬い。
味見。 うん、上出来。
うんうん、頷きつつ鍋の中を木ベラでかき混ぜていると、横からとてつもなく熱い視線を感じた、が、気づかないフリ。
「もうすぐ出来るからパン、切ってくれる?」
「わかったー」
鍋を火から下ろして、冷蔵庫の“こやし”になりかけていた頂き物のハムとチーズを丁寧に盛りつけた白い平皿をテーブルに運ぼうとした。
「あ……、あじみ、だよ?」
キッチンカウンターに置かれた鍋から、君が豪快に中身のラタトゥイユを木ベラで掬って、厚切りのバタールにてんこ盛りにしていた。
テーマ「日常」
6/23/2024, 5:35:40 AM