NoName

Open App

「君は世界に一人だけ!オンリーワンさ!」
「どうしたのいきなり」
イヤホンを片耳だけ外して、プライベート故に静まり返っていた二人きりの部屋へただ突発的に言葉を放つ。心優しい彼はそれがどんなに無意味で不毛なことであろうと、無視せずに言葉を返してくれる。心地が良すぎて調子に乗ってしまうから、甘やかさないほうが身のためだと思うけれど。
「これってなんの褒め言葉でもなくない?」
「そうかな。前向きで良い言葉だと思うけど」
「だって、私みたいな愚図が他にいないことなんて前から知ってたもん」
「確かにお前は愚図で馬鹿だね。これはそういう意味じゃないよ。もう少しその足りない頭で考えてごらん」
「ありゃ、読書の邪魔しちゃった?」
「その上、そういう話は聞き飽きたから。暇なら簡単な本を貸すけど」
「いらない。あーあ、もっと私のことを理解してくれるいい友人が出来ないかな。いっぱい甘やかして優しく姬プして欲しい」
「僕ほどお前を理解してる人もいないと思うけど。あんまり優しくすると嫌がるじゃん」
「えー…そーかな…」

9/9/2023, 1:59:15 PM