小音葉

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肌を滑る鈍色の雫、生温い終焉の園にて
悴む心を擦る爪先は、赤く汚れて見窄らしく
見失った轍と旗に恋焦がれ
這いつくばって叫んでみても鍵はもう跡形もない
腐敗臭の漂よう靄の檻でただ嘆く
絶望する為に生まれた命など、あって良いものか

壊れた耳を研ぎ澄ます
潰れた喉で呼び掛ける
抉れた足は沈黙し、込み上げる反吐を撒き散らして歩く
この世は地獄
諸行無常とは言うけれど、滞る淀みだけが私を愛する
嘲笑すらもう聞こえない
誰も咎めないから、求めないから
自由は孤独で、虚飾も花で
石綿で出来た希望に取り付く

黒い息を吐いて
私は少しずつ死に絶える
引き摺る鼓動を誰も聞かない
引き攣る嗚咽を認められない
毒を舐め回して
棘を飲み込み、私を死に至らしめる
絶望する為に歩いて来た筈では無かったのに

陽だまりに夢を見て、日差しを恐れる
私は今日も暗い陰から
気付かれないよう、誰の目にも留まらない色をして
窓の向こうから鳴り響いている

(雨音に包まれて)

6/11/2025, 11:03:43 AM