光る苔

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こっちに恋。
あっちに孤独。

小さな町の中は、混ざりあっている。
どこかで、恋をして。
どこかで、失恋をしている。
町の中は真逆で溢れてる。

こっちに幸せ。
あっちに不幸せ。

小さな町の中で、絡み合っている。
どこかで、笑い合い。
どこかで、1人泣いている。
町の中の合計は常に0になるように出来ている。

町の中の天秤はどちらかに傾くことは無いのだ。

小さな町。
今すれ違った人の名前も、
隣の人の顔すらも知らぬ、
小さな町。

小さな町の僕の孤独は誰も知らない。
愛に来てと叫べど、
ドアのチャイムはなる事を知らない。
誰か来てと嘆けども、
スマホの着信は眠ったまま。

僕の孤独が誰かの出会いである。
そうやって、世界は回っている。
そう、思い込むだけで少しだけ楽になれた。


小さな町。
誰かの噂話と、
スーパーのセールの話が走り回る、
小さな町。

小さな町の僕の喜びは誰も知らない。
愛に知ってるか尋ねど、
通り過ぎる風は首を傾げた。
誰か知ってるかと聞けど、
青い空は少しだけ悩んでいた。

僕の喜びは僕だけのもの。
だったら、誰かが不幸になることは無い。
そう、思えば素直に喜べた。

あっちに恋。
こっちに孤独。

あっちに幸せ。
こっちに不幸せ。

ここに僕。

誰も知らない僕。
小さな町を眺める僕。

絡み合って、混ざりあう小さな町。
天秤が動くことを忘れた小さな町。

愛に叫べども、誰かに嘆けども、
愛に尋ねても、誰かに聞いても、
僕の孤独も幸せも、僕だけのもの。

僕だけの宝物。

これは、小さな町の、小さな僕の、大きな話。

4/25/2025, 10:24:39 AM