恋か、愛か、それとも
私は孤独でした。
親を知らず、社会からは疎まれ、
街の片隅にさえ、居場所はなく、
泥水を啜り、草の根を喰らい、
木々を屋根として眠る。
人にも獣にもなれずに生きる日々。
そんな私に、
手を差し伸べてくれた、
貴方の温もりは、
初めて触れた、
人の優しさでした。
貴方の優しさに触れる度、
私の心に、
小さな灯火が灯り、
穏やかで優しい気持ちに、
包まれます。
貴方への想いは、
恋か、愛か、それとも、
…尊敬か。
解らないまま、
貴方に手を伸ばします。
ですが。
貴方は優しかったのです。
私にも。他の人にも。
貴方にとって私は、
唯一ではなかったのです。
貴方の視線が他の人を捉える度、
私の心に、
激しい炎が燃え盛り、
焦燥感と渇望に、
駆られます。
貴方への想いは、
恋か、愛か、それとも、
…執着か。
解らないまま、
貴方に手に掛けます。
貴方は、私の生きる希望。
貴方の心の全てを、
私で埋め尽くしたくて。
私の指が、触手の様に、
貴方の喉に喰らい付き、
貴方の生命を、奪い取ります。
少し怯えた顔で私を見詰める、
貴方の硝子玉の様な瞳には、
笑顔の私だけが、写っています。
でも、それで良いのです。
大丈夫です。
貴方を一人には、しません。
直ぐに会いに行きます、と、
力無く横たわる貴方に、
そっと口付け、誓います。
貴方への想いは、
恋か、愛か、それとも、
………か。
解らないまま、
貴方の元に向かいます。
6/4/2025, 5:43:49 PM