さらさら、さらさら。
砂時計で時間を計りながら、作業中のアイツを眺める。
「なんだよ」
「今めちゃくちゃハグしたいけど作業の邪魔したくないから我慢してるところ、です…」
「敬語ウケる。てか砂時計なんてうちにあったか?」
「こないだオレが買った」
「自腹?」
「ったりめーよ」
タイピング音が部屋に響く。
砂の擦れる音はそれよりずっと小さいはずなのに、何故かはっきりと聞こえる。
というより、脳に直接届いていた。
アイツが作業しているのを見かけると同時に計り始めて、もう十何分かの砂が落ちた。
上のほうに僅かに残っている砂を落としきって、また三分を加算しようとした時。
「…………ん」
という呟きとともに、アイツがこちらに両腕を広げた。
「…もう終わったのか?」
「まだだけど、別に急ぎでもねーし……それに、その…こっち優先、したかった、だけ」
頬を染めながら、歯切れ悪く言うアイツ。
…普段クールな分、こういう姿はめちゃくちゃかわいい。
思わず満面の笑みを浮かべてアイツに飛び込んだ。
その拍子に横倒しになり、転がって床に落ちた砂時計。
しばらく、次の三分を計ることはない。
このまま、オレたちの時間も止まればいいのに、なんて思ったり。
【砂時計の音】
10/18/2025, 12:42:22 AM