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ついにこの日が来た。学年ナンバーワンを決める決戦の日が。

あたしは今日、この舞台に立つため、あらゆる手段を行使してきた。
相手の虚を突いたことだって、一度や二度じゃない。時にはペンの力で相手を攻め立てたこともあった。戦いに明け暮れる日々の中で培われたテーピング技術に救われたこともある。
制服を相手の体液で汚したことだって、あたしは後悔していない。勝利のためには仕方ない代償だったから……。

神仏ですら利用してやった。心を無にし、相手の攻撃の威力を和らげるために、念仏を唱えたことだってある。時としてこの念仏が攻撃手段として有効に働いたこともあったっけ……。
どれもこれも卑怯とは言わせない。相手だって条件は同じだったんだから。
そうした過去があって、あたしは今日、この舞台に立っている。

向かい合わせに決勝の相手が現れた。

「————ッ!」

……ひと目見ただけで分かる。こいつは只者じゃない。強者のオーラを全身でひしひしと感じるが、退くわけにはいかない。あたしにだって、ここまで戦い抜いてきた意地と誇りがあるんだからっ!

「……おいおい、本当に決勝の相手が女とはな」

ニヤニヤとした笑みと、粘着質な視線に不快感を覚える。が、過去に戦ってきた男たちは皆、同じような言葉を口にしていた。この期に及んで男だの女だのに囚われているのなら、勝機は十分に、ある——!

ジャッジのボディチェックを受け、最終準備を終えると、あたし達は所定の位置についた。
あとはジャッジの試合開始の合図を待つばかりだ。

「両者、準備はいいか?」

ジャッジの呼びかけに頷きながら、あたしは一度だけ深呼吸をした。今日で全てが、終わる。

「それでは、悔いのない戦いを——」

ジャッジがお互いの間の衝立の端を掴み、決勝戦開始のコールを告げる。

「にーらめっこしーましょ、わーらうとまーけよ、あっぷっぷ!」

8/26/2024, 9:32:44 AM