「半袖」
真っ直ぐ伸びた綺麗な黒髪に、可愛らしい花柄ワンピースのあの子。
まるで人形のように愛らしい、
可憐な少女を体現したかのような女の子。
僕はそんな彼女の秘密を知った。
ラフな半袖姿でいつもとはだいぶ違う格好の彼女を街で見かけた。
陶器のような細くて真っ白な腕をあらわにして。
そんな腕の辺りにチラチラ見え隠れするものがあった。
僕は思わず彼女を追いかけて咄嗟にその腕を掴んでしまった。
「うわぁ!びっくりした…君、同じクラスの子だよね?」
「あ、ごっ、ごめん!いきなり掴んだりして!あのっ、この腕のって…。」
僕が掴んだその腕には肩から二の腕にかけて龍や桜の和彫りが入っていた。
「あー…驚いた?うちの家系そういう所だから。怖がらせちゃうから、みんなには言ってないんだよね? 君も、内緒にしてくれるかな?」
あぁ、だから彼女はどんなに暑い日でも半袖を着なかったのか。
思いがけない出来事に言葉が上手く出てこなくて、コクコクと頷いた。
「ふふっ、ありがとう。約束、ね?」
おそるおそる彼女の小指に自分の小指を結んだ。
7/25/2025, 10:36:30 AM