ゆかぽんたす

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「それで?」
ずっと気になっていた女の子に告白をした。クラスで1番根暗とも言われているこの僕が。多分、後にも先にも告白なんて行為はこれっきりだと思う。自分でも驚くほどこんな行動に出たのは、やっぱり彼女のことが好きだから。好きで、どうしようもなくて毎晩夢にまで出てきてしまう。日中は本物が視界の中にチラつくし。寝不足になるわ食欲不振になるわで、これ以上体調を崩すのがしんどかった。もしかしたら、“好き”という気持ちが押さえられないからというより、自分の健康のために告白を決行したのかもしれない。理由はどうあれ誰かに自分の気持ちを伝えることは生まれて初めてのこと。物凄く緊張した。なのに彼女は、YESでもNOでもない返事を僕にくれた。
「それで、って……」
「だから、私のことが好きで、それでどうするの?」
こんなことを言われるだなんて思いもよらなかった。でも実際、僕は彼女のことが好きで、それでどうなんだろう。付き合いたいのだろうか。正直、考えたこともなかった。ただ彼女に好意的な感情があるという事実を認めるだけで、その先がどうあってほしいだなんて想像すらしていなかった。だってその先は事実ではなく僕の願望になるから。
「ていうか私のどこが好きなの?」
その質問も唐突だった。どこが、と問われて僕は口を噤む。彼女は学年1の人気者で、美人で才女だ。僕以外の男からも告白されてるに決まってる。その人たちにも、僕と同じような質問をしたのだろうか。そして彼らは何と答えたのだろう。可愛いから、スタイルが良いから、頭が良いから。何となく、そんなふうには想像がつく。けれど僕はそれらのどれでもない。
「眩しいから」
「え?」
「キミはいつも眩しいんだ。僕なんかみたいな底面の人間にとっては眩しすぎて、下手したら有害になりかねない」
「……なに、それ」
告白相手に有害だと言ってのけるなんて。やはり今日の僕はどうかしてる。だけど本当のことなんだ。こんな、暗くて地味な僕からしてキミは対極の世界にいる。まるで太陽のようだ。でも絶対に、この手は届くことがない。
「私は貴方に害を及ぼしてるの?」
真っ黒くて大きな瞳が僕の顔を覗き込む。怒られると思っていたのに、その表情は何故か笑っていた。僕を試しているような上目遣いで。
「面白い人。そんなふうに言われたの初めて」
そりゃそうだと思う。“好きです”からの“有害だ”の流れははあまり結びつかない。ごめん、と言おうとした僕をさえぎって彼女は一歩僕に近付く。
「いいよ。じゃあ取り敢えず名前教えてよ。そこから始めましょう」
そしてその指の長い手を僕の方へ差し出してきた。宜しくね、根暗くん。言われた僕はごくりと唾を飲み込んで、彼女の手を握った。太陽が手に届いた瞬間だった。



8/7/2023, 6:03:10 AM