27(ツナ)

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遠くの空へ

召集令状が遂に届いた。
周りは皆「おめでとう。」と口々に俺を讃える。
お国のためにこの命を使える、それは国民にとってこの上ない栄光であった。
だが、俺は内心ではそんなこと、これっぽっちも思っていなかった。
死ぬのは怖い、当然だろう。
齢23。最近、籍を入れたばかりの妻もいるのに。
なぜ、この命を国のために使わなければならない。

召集の前日、妻は手作りの御守りを渡してくれた。そして、そっと俺の懐に身を寄せた。
「皆、お国の為に命を賭して戦えと言っていますが、私はそんなことこれっぽっちも思いません。私の願いはただ1つ、生きて、必ず生きて帰ってきてください。死は誇りでもなんでもない、命を尊ぶ者こそ、真に誇りある者です。…どうか、ご武運を。」
やはり由緒ある武家の娘は強いな、そんなことを思いながら妻を抱き寄せた。
「あぁ…妻の願いはなんでも叶える、それは夫として当然だ。俺はしばらく、遠くの空へ行く。なに、心配することはない。土産を持ってすぐに帰る。」
何がなんでも、どれだけ傷を負っても敵から背を向け情けない姿を晒してでも、国民に罵られ後ろ指を指されたとしても、俺は妻のために俺自身のためにも、この命の炎を絶対に絶やさない。
「では、行ってまいります。」

4/12/2026, 10:45:23 AM