夜空の音

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贈り物の中身

「誕生日おめでとう!」
そう言って渡された箱は白く、黒いリボンがよく映えている。両手サイズの箱の中には、可愛らしい手乗りサイズのぬいぐるみのキーホルダーがふわふわの綿の中にいた。
とても可愛らしくて、ぬいぐるみを手に取ると思わず手の上に座らせて目を合わせる。
「かわゆいな。」
じーとぬいぐるみを見つめる姿を見て満足したのか、彼はタバコに火をつけて、だろ?と自慢げに笑う。
どこに置こうかな?なんて、私は考えながら頭を撫でた。

「おめでと。」
彼はタバコの煙を吐きながら私にそう言った。
ぬいぐるみの彼とは違う彼。
「準備してるから、もうちょい待ってな。」
彼のその言葉に、私はこくんと頷く。
そうして、私は待った。翌日も、翌週も待った。彼が何を用意してるのかはわからない。忘れたのかもしれない。
でも私は、物は何も要らなかった。
ただ、彼と2人きりでいる時間が欲しかった。
どこかに、2人きりで出かけてみたかった。
今にして思えばわがままだったのだろう。きっとそのバチが当たったんだ。
何ヶ月も前から考えて、買った彼への誕生日プレゼントは渡せないまま関係が終わってしまった。
私の部屋の窓辺に、紙袋が置いてある。
いつまで経っても、渡せないままに、季節が変わっていく。

12/2/2025, 10:45:02 AM