小絲さなこ

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「カーテンをひく。復讐のために」


「嫌いなら嫌いって、はっきり言ってくれ」
「別に嫌いというわけでは」
「じゃあ……」
「でも、とくに好きというわけでもないです」
「どっちでもない?」
「そうですねぇ……あー、悪い人とは思ってないです」
「そ、そう……」


強いて言うなら「どうでもいい存在」なのだけど、さすがにそれを言うのは躊躇われる。

誰がどう見ても脈なしの対応。
大抵は、これで諦めてくれる。
貴方と付き合う気がないと、わかってくれるはず。


異性との間に壁を作る、とは言うが、私の場合は壁というよりも遮光遮熱のカーテンをひく、という方が近いかもしれない。

その気になれば簡単に開けることが出来るけど、無作法に開けるのは躊躇われるような、そういう対応をしているから。

今、私は恋愛どころではないのだ。
それよりも、どうしてもやり遂げたいことがある。


「また、あの子告白断ったみたいよ」
「お高く止まって、やな感じー」
「ぱっと見可愛いけど、めちゃくちゃ美人かって言われたら、それほどでもないし」
「クラスメイトに対しても敬語ってさー、キャラ作ってる感じで痛いよね」


私が教室を出た途端に始まる、陰口大会。
彼女たちはこっそりと話しているつもりだろうが、私は誰が何と言っているか、すべて記録している。

彼女たちとの間に隔てているのはレースのカーテン。

彼女たちと仲良く見えるよう振る舞っているが、私は大切なものを彼女たちには絶対に見せない。
本当の志望校も、彼女たちには内緒だ。

彼女たちは私にしたことを綺麗さっぱり忘れているのだろう。
小学生の頃の、あのことを。

彼女たちは、ただの戯れやゲームだと思っているのかもしれない。

だけど、私は貴女たちのしたことを、一生許さない。


手帳を開く。
本日行われた、彼女たちの陰口大会の詳細を記す。


卒業式にすべて壊してやる。
ただその気持ちを抱きながら、中学卒業までの日をカウントしている。


────カーテン

10/12/2024, 3:21:13 AM