ストック

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Theme:高く高く

「自分の周りに壁を造っているんじゃない?」
唯一の親友から言われてドキリとした。流石、彼女の観察眼は鋭い。

自分で言うのも何だが、私は社交的で周囲に気を配るのが得意な方だ。
プライベートでも職場でも友人と呼んで差し支えない関係の人はたくさんいるし、周囲の人や雰囲気の変化にも敏感だ。

「新しいアクセサリー、可愛いね!」
「勘違いだったらごめんなさい。何か元気ないように見えたから…」
「会議も随分長くなってますし、一旦休憩しませんか?一息入れましょうよ!」

そんな私を慕ってくれる人はたくさんいる。
だけど、私は彼らに心を開いてはいない。友人以上の間柄には決して踏み込まないし踏み込ませない。

だって、信頼していた相手に裏切られるなんて経験は、もう二度としたくないから。
だから、高く高く、自分の周囲に壁を築いている。表向きの「社交性」という壁を。

唯一の親友は言う。
「人に裏切られるのは辛いよね。私はあなたの辛さを100%知ってる訳じゃないから軽々しく言うことじゃないかもしれないけど。でも、人といるときにはずっと高い壁を造っているって、疲れちゃうんじゃない?」
確かに彼女の言うとおりだ。私は彼女といるときか一人でいるときしか安心できない。

「月並みだけど『時間が癒せない傷はない』って言うし、辛さが癒えたら、壁を高くすることじゃなくて、少し低くすることに挑戦してみてもいいんじゃないかな」

今はまだ彼女の言葉に素直に頷くことは出来そうにない。
でもそのときが来たら、高く高く築いた壁を少し解体できたらいいなと思う。

10/14/2023, 11:46:46 PM