▶34.「夢と現実」それぞれが望むもの
33.「さよならは言わないで」
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1.「永遠に」近い時を生きる人形✕✕✕
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時系列不明
花街にて
「見てー、私の爪キレイでしょ」
いつものように寝床に腰掛けていると、
子猫が両手の甲をパッと✕✕✕の前に向けて翳した。
「私に美醜の判断はできないが、どの指の爪も均等に整えられ、色もムラなく塗られているのは分かる。また、濃い色に染めるのは技術が必要だろう」
そう人形が応えると手を引っ込め、口角を上げた。
「そうよ、よく分かってるじゃない。合格をあげるわ。ふふ、これでお客さんをいーっぱい夢中にさせるんだから」
「子猫は外に出たいと言っていた」
「うん。いっぱい稼いで、自分で自分を買って、外に出たい。私、花街から出たことないから」
うーん、と子猫は窓に向かって伸びをした。その横顔は年相応の少女に見える。
「ま、それまで元気でいられるか分からないけどね。ね、✕✕✕は?夢ってあるの?」
「私は…人形だ。夢という曖昧な希望を持つことはしない」
12/5/2024, 8:24:37 AM