#たとえ間違っていたとしても
後悔はしていない、と私は自分に言い聞かせた。
私は誰にも頼らず、己の直感に従ってここまで来た。直感、第六感、或いは内なる声。ひとはそんな私を指して嘲笑うのかもしれないが、それはそれで致し方のないことだ。私にはその誹りを甘んじて受ける覚悟がある。
だからこそこうして、私は真っ直ぐに前を向いて立っていられるのだ。両手を上着に差し込み、行き交う人々の流れに流されるともなく、かといって逆らうこともなく、黙念と佇みながら。
しかし、これからどうすべきかはまた別の問題だ。このままもう少し己の勘に頼ってみるか、それがたとえ間違いであったとしても。気の向くまま、足の向くまま、それも悪くはない。悪くはない、が……。
その時、不意に私の背筋に冷たいものが伝った。
本当にそれでいいのか?
このまま私は出られなくなりはしないか?
永久に――半永久的に、あてどなく彷徨い続けることになりはしないか?
この、梅田地下街という迷宮を。
私は暫し逡巡した後しぶしぶ己の敗北を認め、スマートフォンを取り出して地図アプリを開いたのであった。
4/22/2023, 11:45:06 AM