NoName

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「じゃあ、またね」
「うん、またね」
 その言葉を友人と交わして、手を振りながら別れた。
 
 家に帰って、
 ご飯を作って、
 ご飯を食べて、
 お風呂に入る。

 髪の毛をドライヤーで乾かして、
 ヘアミルクやヘアオイルを塗る。
 明日の準備をしているところで携帯が鳴った。
 大急ぎで、準備を済ませて、
 部屋に着信音を鳴り響かせている携帯を手に取った。

「もしもし!」
『今日は出るの遅かったね』
 着信は数時間前に「またね」と言葉を交わして別れた友人。
「うん。今日、寒くてお風呂に浸かりすぎちゃったから時間まで終わらなかったの」
『急に暖かくなったかと思ったら、また冷え込んだもんね』
「ね、何着れば良いのか毎日悩んじゃう」
 ベッドへ寝転がりながら、友人とたわいも無い言葉を投げかけ合う。

「……ふぁ」
『あ、もうこんな時間! 寝なきゃだね』
 私の欠伸を聞いた友人は、通話の終わりを告げられる。
「うん、明日起きれなくなっちゃう」
『じゃあ、またね。おやすみ』
「うん、またね。おやすみ」
 その言葉を交わして、通話を終えた。
 「またね」って言葉を交わして別れたら、夢の中でもきみに会える気がしてる。
 それを友人に伝えたら「何それー、私のことすっごい好きじゃーん」って笑ってたなあ。
 あの時の友人の顔が頭に思い浮かんで、つい笑ってしまう。
 私の笑い声は布団に隔たれて、くぐもっていたけど楽しそうに部屋に響いていた。


 ――またね!

3/31/2025, 1:33:30 PM