—愛 love you—
「お願いだから、もう私に付き纏わないで」
冷たく鋭い彼女の言葉。それが僕の心に深く刺さった。でも僕には分かるんだ。それは彼女が本心で言っているわけではないという事を。
きっと、彼女は素直になれないだけ。僕はそう思う。
そんな事を言われた翌日も僕は、彼女を追いかけた。朝、彼女が家に出る時から、夕方、家に帰るまで、どんな時も目を離さない。
だって僕は彼女を愛しているから。
何で別れを切り出されたのか、未だに分からない。何か理由があるに違いない。
「だから、やめてって言ったよね。警察呼ぶよ」
またバレてしまった。次はもっと上手くやらなくちゃ。そう考えていた瞬間、後頭部に強い衝撃を感じた。
僕はそのまま地面に倒れ込んだ。彼女の顔が青くなっているのが見える。
「ストーカーってのはこいつか?」
後ろから若くてガタイのいい男が、金属バットを持ってやって来た。バットは血がベットリと付いている。僕の血だ。背後からそれで殴られたみたいだ。
その後、彼女は彼と何か話していたようだけれど、聞き取れなかった。そのまま僕の意識は暗闇の中に沈んだ。
僕は彼女を愛している。それ故にこんな最期は悪くない、なんて僕は思う。
お題:愛する、それ故に
10/9/2025, 5:08:40 AM