No.37『世界のおわり』
散文/掌編小説
久しぶりに外に出ても、誰にも会わなくて部屋に戻る。
「どうだった?」
「だめ。誰もいない」
地球が滅亡するというニュースを聞き、避難しない選択肢を選んだ。ジタバタしても始まらないと思ったのもあるし、正直、部屋から出て避難シェルターに行くのも怖かったのだ。
「みんな、どこ行っちゃったんだろうね」
わたしは引きこもりだ。そして、一緒に住んでいる彼女も。地球が滅亡する時間になっても何も起きなかった。だから、わたしは意を決して外に出てみたのだけれど。
静かすぎる街は殺伐としてはいるけど、どこも壊れたりしていないし、以前と変わったところはない。ただ、人っ子一人いないというか、近所でよく見掛ける野良猫の姿も見られなかった。みんな、シェルターに避難したのかと思って、勇気を振り絞って行ってみたけど、そこにも誰もいなくて。
「二人ぼっちになっちゃったね」
どこか嬉しそうに笑う彼女は、心に闇を抱えている。
二人ぼっちの世界。そう考えて目眩がした。
いや、二人ぼっちじゃなくて、この世界にいるのは、今はわたしたちだけ、そうだよね?
誰かそうだと言ってよ。
お題:二人ぼっち
3/22/2023, 9:26:37 AM