人生には分かれ道があると思う。
それは時には2本だったり、もっと多かったり、
進んでみたら行き止まりだったりもするのだろう。
僕が立たされていたのは、まさしく
人生を大きく左右する分かれ道の手前だったのだと
今となってはそう思う。
***
「最近裏でテロ集団が動いているらしい」
クラスで一番影響力のある、いわゆる"一軍"、
カースト上位のオオノがそう言った。
声が素で大きく、授業中ともなると一層目立ったため
教師に名指しされ、おどけながらオオノは謝る。
しかしそれで話すことをやめるわけではなく、
こそこそと、友人と話の続きをし、僕は興味本位で
耳を立てる。
どうやらビル破壊など物理的な破壊を目的とした
テロ集団ではなく、インターネットの隙間をかいくぐり悪さをする方の、テロ集団だそうだ。
さらに聞き耳を立てていると、そのテロ集団のうちの
1人が昨日捕まり、情報が漏れたことによって瞬く間にインターネット上でテロ集団の存在が知らされてしまったらしい。
どんな情報が漏れたのかまでは分からないにしろ、インターネットを使って悪さをする人たちが、インターネットによってその存在を最高速度で知らされてしまう羽目になるなんて、皮肉だな。
そう思っていると、話すうちに声が大きくなってしまったオオノがまた教師に叱られ、問題を解かされていた。
***
その夜、興味本位で僕は自宅のPCで例の件を調べた。
ネットの住民は仕事が早く、もうまとめサイトまで作られている。
サイトの項目は大きく4つに分かれていた。
今回のことの発端。テロ集団の規模。その集団が目的としていると思われること。また構成員の年齢層。
どうやら今回情報が漏れた原因は仲間割れらしい。
それも報酬額などではなく、目的に対する意見の不一致。
物理的なテロ集団においてはそういった思想の違いによる不一致は起こり得るのだろうが、
このようなインターネット犯罪においては皆、データを人質とした身代金目的だとばかり思っていたため、意外だと感じた。
読み進めると、集団の規模は小さく、
また目的は歪んだ世の中に罰を与えることらしい。
こういった犯罪集団の思考は自分たち=正義であり、それをかざせば何をしても許されるのだと思っている節があるように思う。
大層な目的だなと思いながらスクロールし、手を止めた。
この集団の構成員は、ほとんどが高校生らしい。
自分と変わらない年齢の子たちが世を罰しようと
集まって、計画を立てている。
そのことが僕にとっては驚くべきことだった。
***
サイトの内容はここで終わりだが、ページはまだあり
なんとなくスクロールすると、ポインターが変わり、
クリックできる位置があることに気付いた。
あまりにも怪しい匂いを醸し出しているそのボタンを
僕は押すか押さないか、迷っている。
ネットに関する知識は最低限のものだが、それでもこういったサイトのボタンを無闇に押さないことは今どき小学生にだって分かる。
分かっていても、もう止められなかった。
【それが、間違いだったとしても】
4/22/2024, 3:00:46 PM