初心者太郎

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—なりたい自分に—

私は「世の中に真実を伝えたい」という想いを持って、記者になった。悪事を暴き、弱い人の味方になる。そんな記者になれると信じていた。

だが、現実はそううまくはいかない。
朝から晩まで、ひたすら足で情報を稼ぐので体力との戦いだし、運が悪ければ何も手に入らず一日が終わることもある。休日、いきなり電話で呼び出されることもある。

兎にも角にも、大変な仕事なのだ。
この仕事に五年勤めて、私はスポーツ部に配属された。

「大変苦しい時期があったと伺いました」

相槌を打ちながら、プロサッカー選手の山中は聞いている。
彼にはブランクがあった。ケガの影響だったらしい。

「どうやって乗り切ったのでしょうか」
「ええ、確かに苦しい時期が長く続きました」

彼は淡々と語る。

「でもやっぱり、諦めない気持ちがあったから、乗り越えられたんだと思います。根性論になってしまうんですが」

彼は笑って言った。

「最後に、未来のサッカー選手達に、一言お願いします」
「いつも応援ありがとうございます。これまで試合に出れなかった期間を取り戻し、結果で見せます。これからも楽しみに見ていてください」

カメラはないが、山中はぺこりと一礼した。
その後、簡単に挨拶して解散となった。

私はインタビューを反芻しながら、次の取材場所に向かった。

先程のインタビュイーのように、向上心の高い人と関わる機会がある。
だからこの仕事はやめられない。自分も頑張ろうと思えるからだ。

私がどんな記者になるのかは分からないが、足を止めずに前に進みたい。なりたい自分に少しでも近づくために。

お題:見えない未来へ

11/21/2025, 7:40:00 AM