冬至。

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まだ眠気が冷めやらぬまぶたをゆっくり押し上げて、見上げた天井に見覚えがなくて意識がはっきりしないまま考える。
「ここ、どこだっけ…?」
少し周りを見渡そうと動こうとしたらがっちり腰回りに腕を回されてる感覚があった。
そっと横を向くとおれを抱きしめて眠る冴えない男の顔がそこにあった。
そういえば昨日引き止められてそのまま一緒に寝たんだっけ。
本当は帰るつもりでいた。
「何もしないから。ただ一緒に居たい」
そう、情けない顔でたどたどしく真っ直ぐな言葉で引き止められて帰るに帰れなくなった。
そしてこの男は本当に何もしないでただおれを抱きしめて眠った。
徐々に覚醒していく意識とともに、自分の気持ちも一緒に整理していく。
その冴えない印象とは違って思った以上に力強く抱きとめられているその腕のなかで必死に向きを変えて男の方に向き直る。
眠っているのにこんなにおれが動いているのに腰に回された手は外れることはなかった。
この人はなんでおれが好きなんだろう。
真っ直ぐにそして不器用に告げられる愛の言葉にいつしか揺さぶられるようになっていた。
この人とはおれがたまにストレス発散で女装してる時に出会った。
こんなに会うはずもなかったし、男だと明かす前に離れる気で居た。
でも彼といると心地よくて何度も会ってしまっていた。
一晩経って顎の周りにうっすらと伸びたそのヒゲに手を触れる。
「おはようございます」
触れてしまったことで起きたのかうっすらとまぶたを開けて微笑んだ。
それに反射的に微笑み返すと力強く抱き締められた。
ニセモノの長い綺麗な髪がベッドの上で広がる。
そっと背中に腕を回して抱き締め返すとさらに力を込められた。
「きみがこの部屋にいるなんて信じられない」
なんて嬉しそうに呟くからその腕のなかでひとり泣きたくなった。

この人はおれが男だと言ったらどんな反応をするのだろうか。
おれを好きだと熱い視線で見つめたその目でどんな顔をしておれを見るのだろうか。



                ✨(平穏な日常)

3/12/2026, 10:14:46 AM