謎い物語の語り手

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【終わらせないで】

私の人生の主人公は私じゃなかった。

短編集のように、男女関係なく、いつも惹かれた誰かが私の人生の主人公だった。私はその中の群衆の一人。

ある日、一際大きく輝く主人公が現れてしまった。
心から好きになってしまった。
人間としての好きではなく、恋をしてしまったの。

私はいつもその人を目で追いかけた。彼の見る世界、考えること、全てが素敵だった。

でも、彼には想い人がいた。相手を探ると、かつての私の中の主人公の一人だった。

彼女が主人公の物語は、誰かと結ばれてハッピーエンドになったつもりだった。でも、違ったのね。

ああ、彼女にも彼との新しい恋が始まるのかしら。
二人が主人公なら、きっと素敵な物語になるはずだわ。

だから、泣かないで。群衆の一人なんかの為に。

彼女の昔の想い人、ストーカー化したその人から、二人を庇ってこうなったこと、誇らしく思っているの。

とても痛くて苦しかったけど、この苦痛は勲章よ。

『二人の幸せな物語を終わらせないで!』
叫んだこと、少し粋がった言葉だったわ。恥ずかしい。

「神様…終わらせないで……大切な友人の命を……」
そう言って泣く二人の声が最後に聞こえた。

ああ、なんて幸せなんだろう。私は彼らの人生では群衆じゃなかった。これは物語なんかじゃなかったのね。

11/29/2024, 9:05:10 AM