「勝負をしましょう」
向かい合う彼女が不敵に笑った。
彼女は両腕を広げて視線だけで眼下を示す。
「私とあなた。どちらがこの真っ黒な盤面により多くの優れた星々を生み出せるか」
僕は大きな溜息をついた。
「無駄だよ。あちこちに銀河を作ったところで、どうせ星に住まわせた生物たちが互いに争うか、環境を破壊するかして消滅するのがオチだ」
僕がそう意見を述べれば、ロマンが足りないなと彼女は腕を組んだ。
「まだやってもないのにわからないじゃない」
「先人たちはそれで失敗したろ。代替わりした僕らはその失敗から学ばないと」
「失敗したからもうやらないじゃなくて、どうしたらその失敗を活かせるかよ」
「なら、知能の低い生物たちが進化しないよう管理すれば、星が長続きするんじゃないか」
「嫌よ。そんなの創ったってつまらない」
彼女は頑なに首を振った。組んでいた腕を解いて、僕を真っ直ぐに見つめる。
大丈夫よ──。
彼女が今度は柔らかに笑う。
「あなたと私が創った子たちなら、絶対に続いていくわ」
1000年先も、その先も──。
彼女の瞳の奥に確信めいた光が宿っている。こうなるともうこちらが何を言っても聞かないし、結局は僕が折れることになる。
「わかった。付き合うよ、その勝負」
まあ、1000年だろうが、何億光年だろうが、君といれば退屈だけはしないだろうしね。
【1000年先も】
2/3/2023, 11:08:31 PM