『通り雨』
幼なじみと共に電車を降りて駅から出ると夕暮れの迫る地元の街には雨がしとしとと降っていた。
「傘、持ってる?」
「持ってない。持ってる?」
「持ってないから聞いたんだよ」
雨か〜と見たままを口に出して雨雲の広がる空を眺める男子二人。構内のコンビニで傘を買う人たちを見た幼なじみは俺らも買う?と尋ねてきた。
「えー、相合傘になるじゃん」
「シェアする前提で言ってくるじゃん?」
言われてみて2本買う頭が抜けていたことにはたと気づいた。幼なじみはなぜか頷いてコンビニへと向かうと傘を1本だけ買って店を出てきた。
「リクエストにお応えしてあげよう」
相合傘がしたかったわけではなかったはずなのにあれよあれよと雨の中を男子二人の相合傘で歩みだすこととなった。
「ごらん、雨がふたりを祝福しているよ」
「きもちわるっ」
自分よりも背の高い幼なじみが傘を手に笑う。ふと今の自分の立ち位置にいずれは彼の恋人が並んで立つ日が来るのかもしれない、と想像をして複雑な気持ちになった。
「じゃ、また来週」
「うん。傘ありがと」
「相合傘またやろうね」
「いや、いいし!」
それぞれの家の方向へ別れる頃には雨は上がっていた。ひとりになって家路を歩む間になぜ複雑な気持ちになったのだろうとあれこれ考えてみたけれど、確たる答えは出ないまま家にたどり着いてしまった。
9/28/2024, 5:15:02 AM